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さいごに、食べたいもの。

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 結構な確率で、あちこちで語られる、「人生最後に食べたいもの」。俳優や芸能人などが思い出の味や好物を熱弁するのを見かけるたびに、「わたしにとっては何だろう?」と一瞬考えるものの、「や、自分のそのときの健康状態によっても違うよね。自分だけが最後なのか、人類全体が最後なのか、でも、まったく違うし…」なんて理屈っぽく考えてしまい、結局候補を挙げることすらできず(苦笑)。そして、そんな「ネタ」としてすら思い浮かべられない自分のつまらなさ加減にもガッカリしたりして。

 とある生徒さんとレッスンの合間にお話ししていて、「思い浮かばないんですよね…」と云ったら、その方が、「わたしにとっては、粉工房さんのお菓子ですね!もう、種類は問わないです(笑)」なんてお返事が来て、ビックリしつつ、なんだか恐縮したこともありました。

 昨年、発売されるや否や話題となった「ライオンのおやつ」が、長年の理屈っぽさの答えに(一部ですが)なるのでは、と、とっても気になったものの、なかなか手が出せずに1か月ほど迷いに迷って、やはり読んでみたいと購入しました。

 余命宣告を受けた30代前半の女性が、瀬戸内海の小さな島のホスピス「ライオンの家」に移り、最後の日々を穏やかに過ごしてゆく物語。毎週日曜日に、入所者のリクエストに沿った「おやつ」が出されます。思い出のエピソードを聞きながら、食堂で一緒に戴くのですが、匿名であるにも関わらず、ちゃんと、「誰の」リクエストなのか、その場にいた全員がわかるような描写が素敵です。投書箱に入れられ、厳正なる抽選のうえ、そのお菓子が再現されますが、症状の重い人から、などという優先順位はないので、それこそ、元気なうちにそのお菓子が食べられるとは限りません。主人公の女性はなかなか「さいごに食べたいおやつ」が決められないまま、ほかの入所者のエピソードをときに微笑ましく、ときに切なく思い描きながら、ひとくちひとくち、大事に口に運ぶ描写が続きます。

 具体的なことには触れないように書きますが、わたしにとっては、主人公の女性よりも、ホスピスの施設長や、食事担当である年配の姉妹など、スタッフ側の方に感情移入してしまい、もしかして泣くポイントがずれているのでは…と、なんども思いながら読み進めていました。さらには、思い出の食べ物を再現、だなんて、責任重大すぎてわたしには難しいかも、なんて考えて、勝手に悶々としたり(苦笑)。だって、それこそ、もしも「プリン」だなんて云われたら…カラメルはどんな濃さだろう、プリン液は昔ながらのでいいのか、生クリームとか入るタイプか、ふるふるとろんタイプか、カッチリタイプか。確かに見た目は「プリン」だけれど、私が食べたかったのは「このプリン」じゃない、「あのプリンなのに…」なんてなったら一大事なのに!と。そして何より、「抽選」という公平な条件のせいで、元気なうちに食べられなかった入所者さんの様子を見ることになったら、「作り手」としては、あぁ、一週間前にこのお菓子が選ばれていたら…と思うのではないか、と。それを云いだしたら日々の食事そのものが責任重大だし、会話だってそうだし、いえ待って、余命が分かっているからこそ、「その心構え」でお互いに居るけれど、そうではないケースが世の中にどれほどあることか、後から思い返して「あぁ、あのとき会ったのが最後だったんだ」ということのほうが圧倒的に多いではないか、と…

 読み終えたのは昨年の11月のことで、ずっと、書きたいと思いながらもなかなかこちらで書けませんでした。画像に入り込んでいる「旧ブログアドレス」が物語っていますね(笑)。書きかけてはやめ、数行書いてはやめ、の繰り返し。1か月前にはインスタグラムにも

 

 想いは冷める。

 想いは蓄積する。

 想いは忘れる。

 想いは歪む。

 新鮮なうちに、忘れないうちに、書き留めるのも価値のあることだけれど、

 熟成されていない剥きだしの言葉をみて、あとで傷つくこともあるし、

 考えすぎて出てこない、あぁ、もうあの想いは失われてしまったのだ、と残念に思う気持ちもあるし、

 そのときそのときで、言葉や想いへの距離感も付き合い方も変わるものなのだ、ということだけが、今の実感です。

 と、書いているくらいでした。

 今も、思ったようには書けていない気がするのですけれど、やはり、これから読む方のことを考えると細かいエピソードには触れない方がいいように思うので、これで精いっぱいかと思います。「食堂かたつむり」で広く知られる小川糸さんの作品なので、料理の描写はほんとうに鮮やかで美味しそう。重いはずの設定も、軽やかに描かれているがゆえに、ファンタジーのよう。でも、あちらこちらに根源的なことが散りばめられていて、絵空事だけではない重量感もあります。そのへんのバランスが、「読みやすい」に繋がるのだと思います。(わたしにとっては、その「バランス」こそが、違和感であり、感想を書けない理由でもあったのですが、それはまた別に機会があれば書きたいと思います。)

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by farine12 | 2020-03-21 10:14 | 思い出の本/Books in my Memories | Comments(0)

創作スタジオ粉工房のブログ。レッスンの様子や日々のあれこれを綴ります。


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