好きな色は本当にたくさんあって、「何色が好き?」と訊かれるとつい考えてしまいます。洋服、小物、雑貨、食器、文房具…同じ色でも素材の質感によってかなり印象が変わるので、ひとことで「○○色!」とは返事できないのです。
花の場合はだいたい「黄色!」と即答できます。もちろん清楚な白や可愛らしいピンクだって好きだけれど、花屋さんで実際手にとるのは圧倒的に黄色やオレンジ。だって元気になれるから。気持ちがパッと明るくなるから。意外とどんな色の花や緑とでも相性がいいから。
洋服として身に付けるのは難しいけれど、部屋にあるとなんだか嬉しい色。わたしにとっては、まさにHappy Colorです。
『そのアジサイいろの雨傘を買った日、レイコは嬉しくて、部屋の中をひとり歩き回りながら、傘をひらいたりとじたりしてみた。
公園の門を出たところに、知らないお兄さんが荷車をとめて、色とりどりの傘を花が咲いたようにひろげて売っていたのだ。
チューリップの黄や、カンナの朱や、ユリの白や、たくさんある中でアジサイの青がひときわレイコの気をひいた。
こんな色の傘、どこのお店でも売っているのを見たことがない。』
−竹下文子作「風町通信」より「雨が待ってる」から
わたしだったら絶対「チューリップの黄」色の傘を買うのにな。ぽってりと膨らんだあの質感そのままの、鮮やかな黄色。そう思って読んだのは14歳の頃。きっと今なら「傘」として選ぶのは「ユリの白」でしょうけど。それでも、花屋さんで黄色のチューリップを見るたびに思い起こしては「う~ん、捨てがたい…」と思ったり。身に付けるにはちょっと目立ちすぎるかな。そんな思いから「せめて花くらいなら。。」なんて心理もあるかもしれません。