思い出の「プーさんのお料理読本」

思い出の「プーさんのお料理読本」_a0392423_13110016.jpg

 インスタグラム で書いた「料理本リレー」で、ご紹介しきれなかった「思い入れのある本」を勝手に語ることにしました(笑)。長くなりそうですがしばしお付き合いください。

 小学生の時にお菓子作りを始めましたが、当時、自宅の本棚にあったお菓子のレシピ本はほんの数冊でした。そのうちの一冊、「プーさんのお料理読本」は、親戚からのプレゼント。この辺の思い出は当ブログを始めたばかりの頃に綴っていましたので、お時間ある方はあとでちょっと眺めてくださったら嬉しいです。( プーさんの・・・1 )(プーさんの・・・2 ) 

 町のケーキ屋さんにはまだ「黄色のモンブラン」が主流で、「マドレーヌ」も貝殻型ではなく、デコレーションケーキがバタークリームから生クリームに移行してきたくらいの頃でしたから、イギリス菓子といったら「マクビディ・ダイジェスティブビスケット」「パウンドケーキ」「クリスマスプディング」くらいしかわかっておらず(笑)今こんなに好き好き騒いでいる「スコーン」も、未知の食べ物だったのです。そんな程度でこの本と出逢ったのですが、「クマのプーさん」に登場する、あるいは、しそうなお菓子たちを、物語のエピソードにちょこっと絡めて紹介しているもので、これがまたいちばん凄いことなのですが、お菓子の写真も挿絵もなく、完全に「文字のみ」のレシピ本なんですよ!!

 「スコーン」をまだ一度も食べたことがなく、写真もない、挿絵すらない(←しつこいですね)状態で、文章だけをヒントに作るって・・・なかなかな体験でしたね(笑)。ちょっと懐かしくて今回、14ページに記載の「はちみつと干しぶどうのスコーン」を作ってみました。


思い出の「プーさんのお料理読本」_a0392423_13111106.jpg

 いくら手順を何度も何度も、暗記するくらいに確認して作り始めても、結局、どんなものなのか知らずに作っているので、「ほんとうにこれで合ってる???」と、心配だったことを思い出します。材料に「赤砂糖」とか「白い干しぶどう」なんて記載もあったりして、今思えば「カソナードシュガー」「サルタナレーズン」のことだったのでしょうけれど、当時はそんなことを調べる機会も、今のようにネットでささっと検索、なんてわけにもいかず、「知っていないとわからない」ことが詰まっていたのでしょうね。なんといっても一番の落とし穴(!)が、「小麦粉の違い」だったんですよねぇ・・・

 それこそ、上のスコーンなんて、生地がいつまで経ってもベッタベタで、とても麺棒でのばして型抜きするなんてありえないくらいの柔らかさなんです。レシピどおりに計量してるのに、不思議な食べ物だなぁ、と、粉を追加してなんとかぎりぎり型抜きできるくらいの状態にして焼いたらカッチカチだし、甘くないし、「表面に粉を振って焼きます」というのも不思議で不思議で(笑)。焼き上がって温かいうちにバターをつけて食べる??どうゆうこと?パンなの??と。

 想像力を駆使してあれこれ作ってみたけれど、「美味しい!」と思えるものと、「不可解なまま」のものとの差がありすぎて、いつしか「工程写真付き」「仕上がり(お手本)の写真付き」のレシピ本から選んで作ることが多くなり、こちらの本はときどき「読んで愉しむ」程度になった頃・・・縁あって家族でシンガポールに引っ越すことになったのです。

 生活に少し慣れてきた頃、「そうだお菓子を作ろう!」と材料をスーパーに買いに出かけたら・・・Plain Flour, Cake Flour, Self-raising Flour, Strong Flour と、ざっと見ただけで4種の「白い小麦粉」があり、とりあえず「cake」と記載のあるものなら、と選びましたが、どうにも焼き上がりがイマイチで。そしてある日、書店で [POOH cook book] に出逢ったのです!翻訳版を先に持っているのだから、比較して英語の勉強にもなるし、と購入して、どれどれ・・・と読んでみたら。

 


思い出の「プーさんのお料理読本」_a0392423_13112974.jpg
 
 この本に登場する「小麦粉」の記載の約半分は「Self-raising Flour」だったのでした!!上のスコーンも、そう(笑)。こちらはいわゆる、「ベーキングパウダー配合」の小麦粉なので、スポンジケーキとかホットケーキとかを作るときには欠かせないもののようです。

 この粉を使う前提で、さらに、そもそもケーキ用とはいっても日本の薄力粉とは成分も違うので、吸水性もぜんぜん、違ってくるんですよね・・・翻訳者の方も、計量の単位とかオーブンの温度の表記には気を配られたのでしょうけれど、小麦粉の違いまでは書き分けられなかったのでしょうね。

 長年の謎が解けた!!と、すごーくスッキリしたものの、それでもやはり、「もともとどんなものか知らない食べ物を文章だけで再現」するのは難しくて、あれこれ作っては喜んだり撃沈したりを繰り返したものでした。それでも、翻訳版の裏表紙に引用してある、


 クリストファー・ロビンがプーに、

 「プー、きみね、世界じゅうでいちばん、どんなことをするのがすき?」と、ききました。

 いろいろ思いあわせたあげくに、プーはこう答えました。

 「ぼくが、世界じゅうでいちばんすきなのはね、ぼくとコブタであなたに会いにいくんです。そうすると、あなたが、『なにか少しどう?』っていって、ぼくが、『ぼく、少したべてもかまわない。コブタ、きみは?』っていって、外は歌がうたいたくなるようなお天気で、鳥がないてるってのが、ぼく、いちばんすきです」


 この感覚がすべてだなぁと、しみじみ思っていたのですよね。豪華でなくていい、簡素なものでも、大事なひとと美味しい時間を共有すること、ちょっとのんびりすること。これこそが、人生だなぁ、と。

 どちらもすっかり茶色く黄ばみ、ところどころ染みもありますが、いまでも大事にしている思い出の本なのでした。

↓参加しています。応援のクリックどうぞよろしく。
にほんブログ村 スイーツブログ お菓子教室へ
にほんブログ村



by farine12 | 2020-05-15 00:52 | 大事な料理本 | Comments(0)

創作スタジオ粉工房のブログ。レッスンの様子や日々のあれこれを綴ります。


by Konakoubou