「夏服を着た女たち」

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 ニューヨークを舞台に描かれたアーウィン・ショーの短編小説集の表題である、この物語。実際に読んだのは2年ほど前でしたが、なぜかこのタイトルはとても懐かしいものとして記憶していました。もしかしたら、このタイトルが曲名になっている歌があったのかもしれません。

 とある古本屋で、やや黄ばんだ背表紙のタイトルに吸い寄せられてから、毎晩1話づつ、ゆっくりと読んだのを覚えています。特にこの「夏服を着た女たち」は、やや中年に差し掛かった夫婦の、ある日曜日の会話をテーマにしているのですが、その軽妙なやりとり、短い話なのに、ぐっと引き込まれてしまったのでした。街ですれ違うほとんど全ての女性につい視線を流してしまう夫、隣に並んで歩きながらそれを感じて不愉快になる妻。なぜあなたはいつもそうなの、わたしだってなかなかの美人なのに。問い詰める「女」に、なんとか誤解のないように説明しようとする「男」。どこまでも平行線で、ついぞ分かりえないお互いの主張。それでも、気分を変えようと友人夫妻に電話をかけに行く妻の後姿を、「なんて可愛らしい女だろう、なんて素敵な脚だろうと思った」と結ぶあたり。これじゃあ、いつまでもたっても男と女はすれ違ったままなのだと、半ばあきらめたくなるような…

 全てのストーリーが男性の目線で進行しているなかで表現される女性の仕草や行動。同じ女性として、彼女達のため息も失望も、微笑みも、嘘泣きでさえ、ある意味で「共感」できると思いつつ、男性の視点はこうなんだ、こんなことを云いながら、その場しのぎの言い訳を必死に考えてみたり、開き直ってみたり、かと思えば女性よりもずっと感傷的でロマンティックな想いがあったり…いろんな意味で「ああ、そうなんだ」と思わされます。1930年代後半から書かれたというこの物語たち。タイトルの「夏服を着た女たち」は、作者が25歳の時に書き上げたそうで、留守中に原稿を読んだ妻が怒り狂っていた、というエピソードが残っているとか。こんなにも身近に居るのに、見ているものはこんなに違う。同じことを話しているはずなのに、こんなにも論点が違う。皮肉なことのはずなのに、どこかで「でも、もともと違うんだもの」とちょっぴり気が楽になれそうな、そんなお話たちが詰まっているのでした。

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by farine12 | 2007-05-14 16:46 | 思い出の本/Books in my Memories | Comments(0)

創作スタジオ粉工房のブログ。レッスンの様子や日々のあれこれを綴ります。


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