懐かしいテキスト
2006年 09月 19日
お菓子作りを始めた頃のテキストは、今でもわたしの宝物です。変色していたり、バターが飛んだシミがあったり、メレンゲを作るときに白身が跳ねたのか、ページがくっついていたりといろいろですが、愛着があって捨てられません。
今ほど「手作りお菓子」が一般的ではなかった時代、お店でケーキを買えば「モンブラン、プリン、ショートケーキ、シュークリーム」くらいが選択範囲。近所では、まだタルトを見かけませんでしたから、本に載っていた「オーストリア風」チーズタルトが憧れでした。確か一度挑戦してみて、型にうまく敷き込めず、そのままクッキーにして食べたような記憶が…結局土台はグラハムクラッカーを砕いて敷き詰めたものにして中身は本通りに作り、まぁまぁ納得していた筈が、型から出そうとした瞬間に底が(土台が)崩れ…ものすごく落ち込んだのを覚えています。
また、当時はカッテージチーズに「裏ごしタイプ」がなく、クリームチーズと合わせて「裏ごし」するのが子どもの腕力では重労働だったことも懐かしい思い出です。あんなに頑張ったのに底が崩れたんですから、もう泣きそうでした。金輪際、タルトはしない!なんて妙な決心をしたり。今振り返ると笑ってしまうことばかりでしたっけ。
この渦巻きクッキーも当時の憧れのひとつ。先に市松模様にチャレンジして、見事どつぼに嵌って大失敗したので、かなり長いこと写真を眺めているだけで終わっていました。初めて作ってカットした瞬間の喜びは今でも思い出せるくらいです。
まだ見ぬお菓子への憧れ…今のようになんでも買える時代ではなかったからこそ強く印象に残っているのだと思いつつ、美味しいものを作りたい、誰かに喜んでもらいたい、一緒に美味しい時間を共有したいという気持ちは、どんなに時代が変わっても、きっと誰もが思うことなのでしょう。少し時代遅れの装丁、かなり甘めの配合、でん、と何もかもが入っている構図。今とは違う構成のしかたに、ふと微笑みながら、それでも時々引っ張り出しては眺めるのでした。