懐かしい空気
2006年 09月 12日
南アフリカからの帰り、シンガポールでトランジットに15時間ほどありましたので、ひたすらあちこち歩いてきました。常夏の国ではありますが、大きな街路樹と常に吹いている風のおかげで、体感温度としては東京の真夏日よりも涼しく感じます。湿度の高さだけはどうにもなりませんが。ショッピングに有名な「オーチャードロード」は建物に大きな変化はありませんでしたが、ふと思いついてMRTと呼ばれる地下鉄に乗ろうとしたらチケットの買い方がすっかり変わっててドキドキ。料金+デポジット制になっていて、なんだかよくわからない…暮らしていた当時は観光客用の「バス・地下鉄一日乗車券」があったのを思い出して聞いてみたら、そっけなく「今はそんなのないわよ」と窓口の女性に言われてガックリ。とりあえず片道分買って、以前暮らしていたエリアまで行ってみることに。
日本に戻ってきてから早12年。その間に2回遊びに来ましたが、ここまで足を延ばすことはありませんでした。まず大きく変わったのが、マンションの手前が大きな空き地だったのが、別のマンションが建って景観が変化したこと。新築マンション越しに、なんだかくすんで見えました。昔はストライプがくっきりしてたのになぁ、なんて思ったり。そして、横断歩道が無くなって、その分巨大な「歩道橋」が出来たこと。スコールに備えて屋根つきの歩道橋ですから圧迫感の凄いのがちょっと残念でした。もう当時の「ご近所さん」はみんなお引越ししているので、歩道橋を渡ってまで行って見ようという気にはならず、こっち側でしばらく眺めて駅まで戻りました。
駅の少し先の、昔よく通ったホッカーセンターへ。入れ替わったお店が多い中、一番お気に入りの「チキンライス」が健在で大感激!!しっかり味わってきました。ローストチキンかスチームチキンを選ぶと、チキンスープで炊いたご飯の上に乗せてくれます。付け合せはきゅうり。これが不思議と合うんです♪シンガポールに住んで最初の3年は、鶏スープの仕込み中の匂いが苦手で「食わず嫌い」だったのです。ある時友人に「ここのは美味しいんだよ」と薦められて初めて挑戦したら、あまりの美味しさに「3年損してた!」と悔しくなったほど感激したのでした。そのあとは食べ比べしてみて、「チキンライスのお店は数あれど、ここのが一番美味しい!」と確信したのでした。今回数年ぶりだったのに味も変わってなくて、最高に幸せでした。
飲み物は専門のお店があって、食事しているとおじさんが注文を取りに来てくれます。迷わず地元のコーヒーを頼むと、おじさん、嬉しそうに「はいよ」って感じで持ってきてくれます。以前このブログでもご紹介しましたが、地元コーヒーはちょっと濃い目に入っていて、コンデンスミルクを入れて(というか、最初に云わないと入った状態で出てきます)飲むのが特徴。当時は外国人はあまり飲んでいるのを見かけなかったので、ローカルの人と食事してこれを頼むと、「このおいしさがわかるとは!」と一気に距離が近くなるという魔法のドリンクだったのですよ。
今度はバスに乗ってのんびりとオーチャードに戻り、こまごま買い物しながら夕暮れ時のラッフルズ・ホテルまで歩きました。地下鉄3駅分くらい。本当はマリーナ・ベイで雰囲気のある写真を撮るつもりでいましたが、近道は忘れてるし、夜に向けてカップルだらけになるのを思い出して止めておきました。結構あちこちで工事中だったので、いいなと思う建物の写真を撮るのが難しかったです。上の写真はラッフルズより手前にあるショッピングセンター。
そしてたどり着いたラッフルズホテル。いっぱい写真を撮るうちに、気がつけば日も暮れて真っ暗に。昼間も綺麗なのですが、夕暮れ時は格別にロマンティックなのです。卒業式と、それに続くパーティーがここだったこともあり、思い入れの強い場所でもあります。そういえばここのバーも洗練された大人の社交場という雰囲気でとっても素敵なのですが、歩き回る為にうんとカジュアルな格好だし、女性ひとりで入るところではないので、次回の愉しみに取っておく事にしました。
最初は「変わってしまった」部分を見たら、もっともの悲しくなるかと予想してたのに全然寂しく感じなかったというのが、今回の不思議な発見でした。懐かしくて帰りたくて仕方が無かった時期もあったけれど、「自分の居場所」がきちんとある今だからこそ、静かに眺められる景色もあるのだと。決別、というほど思いつめた割り切りでもなく、よそ者だという疎外感でもなく。あまやかな想いが浮かびつつ感傷的過ぎず。「あの時のわたしの欠片たちが今のわたしに繋がっている」と思うと、きっと、もっと、がんばれるはず。改めてそう思いながら、空港に向かったのでした。