自分探しの道のり
2005年 08月 23日

シルヴァスタイン作の「ぼくをさがしに」はシンプルなイラストなのに、とても感慨深い絵本。一切れ分だけカットしたホールのケーキのようなカタチの「ぼく」が、ぴったりと合う「かけら」を探して旅をするというもの。フリーハンドで描かれたあのラインを見れば一度は読んだことがある、と思い出す方も多いのではないでしょうか。
「何かが足りない」と気が付いて、「ぴったりくるかけらを探そう」と、歩きだした先で出逢う、数々のかけらたち。あるものは大きすぎ、あるものは小さすぎてすぐに落っことし、またあるものは尖がりすぎている。やっとちょうどいいかけらに出逢ってぴったりとはまり、まんまるになったおかげで「ぼく」は転がり始める。もう歩かなくても転がれる!と感激したのもつかの間、今度は転がりすぎてどんどん加速度がつき、花や草を眺める余裕すらない…立ち止まり、「なるほど、そういうことか」とかけらをそっと下ろして、「ぼく」はゆっくりと歩いていく、というストーリー。
高校生でこの絵本に出会ったときから、2~3年おきに手にとって眺めていますが、いつ読んでも新鮮な上に、自分のその時の状況によって解釈が変化するということに驚かされます。かけら=人生のパートナー、だった時期。ぼく=仕事、かけら=夢、だった時期。孤独感がつのる日々には「腹心の友」だったりしました。いづれも「今自分に足りないものを他者から補う」という発想でした。
最近たどり着いたのは「ぼく」もわたしで「かけら」もわたし、ということ。自分に足りないものを補える(フォローできる)のは自分自身なのではないかと。客観的に「今何が足りないか」をしっかりと見つめて、「こうありたい自分」に少しでも近づくために努力を続けること。「そこにあるかけら」を拾うのではなく、「かけら自体を自分で創り出す」ことこそが自己実現なのではないかと…
この絵本には「かけら」の視点から描かれた続編があって、出逢った時から漠然と、続編のほうがわかりやすいと感じていたのです。「かけらも自分」と考えるようになってから、やっとその理由に納得がいったのでした。人生讃歌ともいうべき2冊です。