「真夜中のパーティー」

 「トムは真夜中の庭で」の作者として知られるフィリパ・ピアス。短編集に出会ったのはこの数年のことですが、まるで子ども時代に一通り読んでいたのではないかと錯覚するくらい、懐かしさに満ちたエピソードがいっぱい。日常生活の中のほんの一瞬を切り取ったような、淡々とした内容ですが不思議と引き込まれてしまいます。

 「真夜中のパーティー」は4兄弟の上から3番目、チャーリーの視点で描かれています。突然目が覚めてしまって、水でも飲もうとキッチンに行くと、そこにはいつも張り合っているすぐ上のお姉さん、マーガレットが。両親に言いつけられないようにお互いけん制しつつも、こっそり何かつまもうとゴソゴソやっていると、一番上のお姉さん、アリソンに気づかれてしまいます。
 とうとうばれて叱られる!と思いきや、アリソンの提案で「ポテトケーキを作る」ことになります。マッシュポテトが無くなっていたらお母さんにばれる、と心配するマーガレットに、アリソンがきっぱりと「いくらか無くなっていれば気づくでしょうけどね。でもさ、すっかり無くなってて、ボウルも洗って拭いて、ほかのものと一緒に片付けてあればさ、自分の思い違いだったと思うわよ。」
 さらに「やるんなら4人でなくちゃだめだわよ。ウィルソンが仲間に入ってたとなれば、お母さんの風当たりもそれほどきつくないわ」と、一番下の弟を起こして連れてくるように指図します。さて、この計画はいかに?まるで自分まで共犯者になったようにドキドキしながら読んでしまいました。何人も兄弟がいる中での一番上ってこんなにしっかり、頼もしい存在なのかな。いつもは「小さいお母さん」みたいに一段上からガミガミ云うくせに、何かの時にはちゃんと結束して「子ども」の側にまわるんだ…と思うと、一人っ子のわたしには微笑ましいかぎり。

 「親に内緒で好きなものをお腹いっぱい食べる」というのはある種の「憧れ」のようなもので、これをテーマにした作品は古今東西色々ありますが、この物語ほど「日常的」で、役割分担のはっきりしたものは少ないんじゃないかと思えます。両親のキャラクターもいい味出してて、「子どもの目から見た大人」のイメージそのままです。自分はもう確実に「こっちがわ」にいるけれど、両方の気持ちがわかる大人でありたいと、こういう作品に出会う度に思います。

by farine12 | 2005-04-21 22:23 | 思い出の本/Books in my Memories | Comments(0)

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